裏ワザ発見

maldives2005-02-10

共生ハゼ好きの皆様のあいだで圧倒的人気を誇るのが、このトールフィンゴビー。
西部インド洋に限定される生息域という希少性、ホタテツノハゼ真っ青のビシッと立った背ビレに代表されるビジュアル、等々の理由からハゼ系のリクエストナンバーワンの座に君臨しております。

世界的ハゼ基準から見ると、モルディブのハゼというのは全体的にシャイとよく言われますが、そのシャイ揃いのメンツのなかでもトールフィンゴビーの臆病さというのは群を抜いており、観察・撮影には一通りでない苦労をさせられます。かなり手前から着底、10分以上の時間をかけて水中匍匐スパイダーマン体勢でジリジリと寄っていっても、ちょっとした手の動きや、わずかな呼吸の乱れでもマッハのスピードで逃げ込まれてしまうのです。まさに真剣勝負。彼が引っ込んだあとの虚ろなハゼ穴を前にした私から「うぇ〜〜〜〜〜〜ぃっっっ」あとちょっとのところで積み木が壊してしまった幼稚園児のような絶叫が水中を駆けめぐります。もちろん、さかな君風味に両手はグーに握りしめて左右に振りながら。
さあ、そんなこんなで数々の難関をくぐり抜けつつ、トール様の数十センチ手前まで到着、「さあ撮影だぁ!!!」とカメラを構えたところで、また問題発生でございます。何かというと・・・背ビレがヘロロ〜ンと寝ているのです。トールフィンゴビーの背ビレというのは普段は立っておらず、ED治療が必要なのではという杞憂を抱かせるほどに萎びていることが多いのですよ。
どうも、この背ビレ、トール様が危険を感じたときにビロンと立つものらしいのです。ということは、「適度な危機感」をやっこさんに抱かせればいいワケですよね。まあ、でもご想像が付くとおり、この「適度な危機感」のサジ加減がムズいんですよ〜。
ハゼの手前上方で軽く手もしくは指示棒を振る、照射角度の広い水中ライトを当てる等々の方法がありますが、「やりすぎ」は逃げられる原因になります。しかも、これらの方法はカメラを持ったダイバーがファインダーをのぞきながら行うには、やや無理のある動作です。バディーのアシストが必須といえるでしょう。(この話は、両手操作が必要な一眼レフカメラを前提としています)
では、バディーのアシストが得られないダイバーが、ファインダーを覗いた状態でトールフィンゴビーに適度な危機感を抱かせるにはどのようにすればいいのか、その方法をこの前発見したのです!!!

その方法とは・・・歌を唄うということ。
「んだよ〜、ここまで引っ張っておいてこんなオチかよ!おい偽カリスマガイドぉ!!」という野次はできればやめていただきたい。本人は大発見のつもりなんですから。
その奇跡は、背ビレを立てないトールフィンを覗くのに飽きた私が松田聖子の名曲「蒼いフォトグラフ」を口ずさんだ時に起きました。♪光と影のなぁかでぇ〜♪♪とややヨーデル気味に私が歌い出すと、歌に合わせるかのようにトールフィンゴビーの背ビレがビシッ、ビシッと上下しだしたのです。
♪今一瞬、あなたが♪♪
ビシッ
♪好きよぉ♪♪
ビシッ、ビシッ
♪明日になれば♪♪
ビシッ、ビシッ、ビシッ
・・・すみません、上6行だけ脚色してます・・・
まあ、いずれにしても音にも反応してくれることが分かりました。当然のことながらこの後も、私の「水中ジャイアンリサイタル」は続いたのです。背景に土管はなかったけど。

皆様もぜひお試しください。海以外でも、話を聞いてくれない古女房の背中に、もしくは通勤途中の電車の中で気になる異性の耳元で試してみる等々、応用が利くワザであると自負しております。恋愛にも適度な警戒心は必要かと。

ちなみに・・・・・
蒼いフォトグラフは83年発売「瞳はダイアモンド」のB面(死語)に収録されておりました。